ぎっくり腰
ぎっくり腰とは
重い物を持ち上げる、かがむ、腰をねじるなど、ふとした動作がきっかけで急に腰が痛くなって動けなくなる状態をぎっくり腰と言います。欧米では「魔女の一撃」と呼ばれるほど発症時の痛みは強烈です。激しい痛みは2週間程度で解消していきますが、軽度の腰痛が何ヶ月も残るケースも珍しくありません。ぎっくり腰をきっかけとして徐々に腰部脊柱管狭窄や腰椎椎間板ヘルニアなどの重篤疾患に移行していく場合もあるので注意が必要です。
原因
筋肉の柔軟性低下に起因する筋膜断裂(約90%)及び椎間板の退行性変性に起因する椎間板線維輪の断裂(約10%)が痛みの主な原因となります。中腰姿勢は体重の1.5倍という負荷が腰椎椎間関節にかかるので特に損傷しやすくなります。
腰の痛みに加えて、足に力が入らない、足が痺れる等の下肢症状がある場合は腰椎椎間板ヘルニアの可能性もあります。また、腰椎圧迫骨折などでも腰に強い痛みを生じることがある為、ぎっくり腰との鑑別が重要となります。
本稿では特に多い筋膜断裂に起因するぎっくり腰を中心に解説いたします。
検査法
①動作時痛検査
立位、座位、側臥位など患者様に負担のかからない姿勢で腰を動かしてもらい、痛みの出る動作と
部位から損傷筋膜を同定します(図1)。
腰を右に捻った際に右腰の外側が痛い場合は腸肋筋、左腰の中央付近が痛い場合は多裂筋の筋膜断裂が疑われます。また、後ろに反らした際に腰の中央付近が痛む場合は多裂筋と最長筋の筋膜断裂が疑われます。
図1
②負傷原因による断裂筋膜の同定法
うがいなどで身体を反った際や物を持ち上げる動作では多裂筋や最長筋、起床動作での体の捻り動作などでは腸肋筋、イスからの立ち上がり動作では大殿筋の筋膜断裂が生じやすくなります(図2)。
③叩打痛検査(図3)
背中から腰骨をゲンコツで叩いた際に、骨上に限局的な痛みが生じる場合は圧迫骨折を疑います。
圧迫骨折時に生じる骨膜炎により骨折部周囲の筋緊張が亢進し筋膜痛が出現します。そのため、筋膜断裂性のぎっくり腰と誤診してしまいやすいので、しっかりとした鑑別が重要となります。
図3
④知覚検査(図4)・筋力検査(図5)
知覚異常や下肢の筋力低下があった場合は、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症等を疑います。
通常、ぎっくり腰では下肢の知覚異常や筋力低下はみられません。
図4
図5
⑤検温・血圧検査
発熱や血圧低下がみられた場合は、内科的疾患が原因で生じる腰痛(腎結石、解離性動脈瘤など)が疑われるので、その際には提携先の病院をすぐに紹介させていただきます。
※全ての検査は優しく、丁寧に行いますので、ご安心ください。
3D筋膜コルセット療法
脊椎の後方伸展を制限するビッグメタルプレート(図8)と、脊椎の側方伸展及び回旋を制限する2つの斜めメタルプレート(図8)と、脊椎の側屈及び前屈を制限する2つのミニプレート(図8)の働きで腰椎椎間関節及び腰仙関節を効果的に不動化します。
急性腰痛症患者12名を対象とした当社の研究において、本コルセット(新型)の装着のみで起立時の腰痛を平均57%軽減するという結果が出ております(図9)。
図7
図8
図9
体幹キャストコルセット法(図10)
当院で処方している各種コルセットの中で最も固定力が高く、当日その場で体に合わせてオーダーメイドで作成します。筋膜や線維輪の断裂が生じた部位を完全不動化することで痛みと炎症をいち早く鎮めます。腰痛が強くまともに歩けない人でも本コルセットを装着する事で歩ける様になります。ぎっくり腰で動けないが仕事が休めない人などに最適な固定法となります。
図10
物理療法
筋肉の柔軟性が低下した部位に対してマッサージや高電圧療法(図11)、鍼治療(図12)を行います。高い電圧をかけられる高電圧療法や深部の筋膜に直接刺激を与えられる鍼治療では、通常の手技療法で得られない、強い筋弛緩を得ることが可能な為、高い疼痛軽減効果が期待できます。
図11
図12
治療期間
筋肉の柔軟性を高める高電圧療法や鍼治療の実施並びに3D筋膜コルセットの装着により、治療直後より腰痛は大幅に軽減し、継続的に治療することで通常1~2週間で痛みが消失します。