症例紹介
ドケルバン病
1.ドケルバン病とは?
ドケルバン病とは、手首の親指側にある長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の腱鞘に生じる腱鞘炎の一つです(図1)。
スポーツ選手や指を良く使う仕事の人に多く生じます。また、妊娠出産期や更年期の女性にも多く見られます。最新の研究により、妊娠出産期や更年期の女性に腱鞘炎が多発する理由は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌減少により筋・腱・腱鞘の滑走性が低下することが原因と分かってきております。当院では、この低下した滑走性を取り戻すことを目的とした治療を行っております。
図1
2.主な症状
手首の母指側に痛みや腫れ、熱感が生じます。特に親指を広げたり動かしたりすると強い痛みが生じます。
3.検査方法
接骨院へ受診された際には問診・視診・触診・徒手検査に加え、超音波画像観察装置(エコー)を用いて腱や腱鞘の腫れの状態及び炎症の状態を確認します(図2)。
図2
徒手検査ではフィンケルスタインテストを行います。
※フィンケルスタインテストとは、親指を握り込んだ状態で手首を小指側に倒すことで痛みが誘発されるか確認するテストです(図3)。
図3
4.治療方法
一般的に整形外科では手術療法が行われることがありますが、当院では手術をせずに治す保存療法を行っており、良好な治療成績を治めております。症状に合わせてテーピングや熱可塑性樹脂(プライトン)などによる固定療法を行います(図4)。
固定を行い、患部を完全不動化とすることで炎症の消退と組織修復を早めることが可能です。また、腱鞘炎の根本原因である滑走性の低下した筋・腱・腱鞘に対して電気療法や手技療法を行うことで滑走性を改善させ、治癒に導きます。
図4
また、痛みの強い場合は高電圧療法を実施することで痛みの大幅な軽減と患部の血流改善をもたらし、組織修復を早めることが可能です。日常生活での動作指導やリハビリ指導なども行い、完全に治癒するまでサポートします。
動脈硬化等により上肢の血流不全を起こしている場合、患部の治癒が遅延する場合もあるので、全身の状態も確認し、適切に治療を行います。
5.症例紹介
47歳、女性、ドケルバン病
⑴負傷原因
長時間のパソコン作業中、タイピングを繰り返し行うことで右の親指の付け根付近の痛みが出現。
⑵経緯
安静に過ごし様子を見るも痛みが引かず、徐々に痛みが増してきたため当院来院。
問診・視診・触診・エコー検査の結果、ドケルバン病と判断したため、患部のプライトン固定法を実施。
⑶治療内容
来院時に硬くなっている筋肉を緩め、筋・腱・腱鞘の滑走性を高めるために電気療法、手技療法、運動療法、LIPUS等を行い、日常生活ではプライトン固定を継続。
⑷経過
治療を継続し、負傷から約1か月後には患部の炎症が静まり、痛みも消失したため治療を終了しました。
⑸総評
患部を固定することで炎症を早期に消退させ、加えて高電圧治療を行うことで短期間で滑走性を改善し、痛みを消失させることができました。