足関節捻挫
1.足関節(足首)捻挫とは?
転倒やスポーツ時に足を捻った際に足首の靭帯が傷ついたり切れたりする怪我です。歩くと痛いなどの症状が見られます。(図1:色がついている場所が傷つきやすい靭帯です。赤:前距腓靭帯、緑:踵腓靭帯、青:前下脛腓靭帯)
2.足関節捻挫の程度
靭帯が傷ついた重症度は程度に応じて1〜3度の3段階に分けられています(図2)。
1度:靭帯の微細損傷
2度:靭帯が部分断裂
3度:靭帯が完全断裂
3.怪我の仕方
捻挫は大きく2種類の怪我に分けられます。
1つ目は「内反捻挫」といい、ほとんどの方はこのように怪我をされます(図3)。
この場合、外くるぶし側を怪我することが多いです。
2つ目は「外反捻挫」
怪我の仕方としてはあまり多くありませんが、このように怪我されることもあります(図4)。
この場合、内くるぶし側を怪我されることが多いです。
(図3:内反捻挫)
(図4:外反捻挫)
4.検査方法
(1)圧痛検査:押した際に生じる痛みの強さや部位を評価する。
(2)牽引ストレステスト:靭帯に牽引力を加えて損傷程度を評価する。
(3)超音波画像観察装置(エコー):音の跳ね返りを画像化し、筋肉・腱・靭帯・骨・軟骨に異常が無いか評価する(図5)。
上記、(1)(2)(3)等の検査を行い、総合的に怪我の程度を判断します。
※全ての検査は優しく、丁寧に行いますので、ご安心ください。
5.当院で実施している治療法の紹介
5ー1.固定法
(1) キャストギプス固定法(図6)
足関節の動きを完全に止める。2度または3度の初期に適応。
(2)U字型樹脂固定法(図7)
足関節を少し動かせるが、損傷方向への動きは制限する。2度または3度の中期に適応。
(3)綿包帯固定法(図8)
足関節をかなり動かせるが、最終可動域までは動かせないように制限する。1度または2度、3度の後期に適応。
(図6)
(図7)
(図8)
5-2.物理療法
(1) 低出力超音波パルス療法(LIPUS):超音波による振動刺激を傷ついた靭帯組織に加える事で治癒期間を約40%短縮させる。
(2)電療:筋肉へ電気刺激を与えることにより筋力低下を防いだり、血液循環を改善して治癒を促進させる。
5−3.治療の流れ
(1)治療初期(炎症期)
この時期は炎症を早く終了させ、次の修復段階へスムーズに移行させる為、固定を行います。早期に患部の安静を保ち、炎症を最短で終わらせる事が、治癒期間を短くする為に最も重要になってきます。
(2)治療中期(増殖期)
炎症が落ち着いたら損傷方向への動きを制限しつつ、徐々に足関節の動きを許容し、機能的な回復を促します。また、痛みが出ない範囲でリハビリを開始し、機能の向上をさせます。
(3)治療後期(再形成期)
靭帯の強度がかなり出ているが、足関節の動きを最終可動域までは動かないよう制限します。リハビリとしては、より競技特性を取り入れた運動療法を行います。
6.足関節捻挫が治るまでの期間
強固な固定で患部を安静に保つ事ができれば歩行時痛は1週間程度で大幅に軽減します。
3〜4週目に靭帯組織の強度が一気に増し、再損傷のリスクがかなり軽減されますので競技復帰が可能となります。
7.捻挫の症例紹介
18歳 男性 サッカー部
過去に同じ足で捻挫の経験がある。
(1)負傷原因
部活動のサッカー中に足関節内反捻挫。
(2)捻挫の重症度
エコーを用いて、前距腓靭帯3度損傷疑いを認めた(図9)。
(図9)
(3)治療方法
キャストギプス固定法を7日間行い、その後、綿包帯固定法に変更し受傷後約6週間(46日)で固定終了。
(4)経過
キャストギプス固定法をした状態で筋力トレーニングやバランストレーニングを積極的に行い、筋力やバランス感覚の低下を防げた事により、受傷10日目に競技復帰が可能だった。
(5)総評
重度な足関節捻挫でも、適切な固定の選択と早期トレーニングを実施することにより、通常よりも短期間での競技復帰が可能となります。
8.最後に
患者様から「捻挫したけど湿布だけしてました。」とお聞きすることが時々あります。
捻挫は靭帯損傷の為、エコー及び圧痛検査等を実施し、損傷程度に応じた適切な固定をして治療しないと靭帯が伸びてしまい、捻挫癖がついてしまいます。
「固定すると歩けなくなるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、当院では固定直後から痛みなく歩行可能で、歩きながら捻挫を治すことが可能です。また、LIPUSを患部に照射することで治癒速度を早め、早期復帰も可能となりますので、足を捻挫された際はぜひ一度ご相談ください。